日本財団・横浜市教育委員会・横浜国立大学による特別支援学校における「意思決定支援」連携協定を締結

日本財団は、障害や認知症等で判断能力が十分でない人も、地域生活や社会参加を継続していくために自らの意思を表明し、意思決定ができる仕組みづくりを推進しています。
この一環として2024年3月29日に知的障害のある生徒が自分の意思をきちんと表明できるようにチームで支援していく新しい取り組みの実現を目指し、横浜市教育委員会、横浜国立大学と3者間で連携協定を結びました。

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左から、横浜市教育長 鯉渕 信也、横浜国立大学学長 梅原 出、日本財団常務理事 吉倉和宏

協定式の中で、意思決定支援を進める日本財団常務理事の吉倉和宏は、「今回の大きなポイントは現場の学校、先生方が協力してくださるというところです。取り組みを開始すると、周囲の思いと一致しないことが起こることもあるかもしれませんが、誰にも反抗期があるように、子ども自身の心からの願いに耳を傾けていくことが大切です。それを現場で支えてくださる先生方のためにも、我々皆が協力して先に進んでいければと願っております。」と述べました。

また、協定を共に締結した横浜市教育長、横浜国立大学学長も以下の通り本協定についての期待を述べています。

横浜国立大学 梅原学長:「過去から現在に渡り、教育研究に多様性・包摂性を尊重し、歓迎する理念が受け継がれてきた横浜国立大学では、これまでも、国や自治体、産業界、市民等の皆さまと連携し、科学技術の発展と豊かな社会の醸成に寄与してきました。本学は、脈々と受け継いできたこの理念のもと、多様な背景をもつ人々を含む、誰もが安心して暮らしていける社会の基盤づくりに学術機関として貢献してまいります。」

横浜市教育委員会事務局 鯉渕教育長:「障害児者の皆さまのウェルビーイングを考える上で、意思決定支援は大事なことだと考えています。また、特別支援学校において、障害の程度に関わらず、生徒自身の思いや願いを引き出すためには、様々な学習場面における本人中心の意思決定支援に関する取り組みの強化が必要です。三者が力を合わせて取り組むことで、学校教育に関わっている人たちを含む、すべての方々の今後の人生を豊かにできることを願っております。」

本連携協定により、横浜市内の特別支援学校に通う子どもたちを、進路などの意思決定場面において親だけでなく、意思決定支援に関する研修を受けた教職員や福祉関係者らがチームとなり支えることができるようになります。
日本財団では、2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」に基づき、誰もが自分の意思が反映された生活を送ることができる仕組みづくりを目指し、2022年に豊田市との間で高齢者等の意思決定支援に関する連携協定を締結しました。今回の子どもの意思決定に関する自治体との連携協定は、横浜市が初となります。今後、これらの取り組みの評価分析を進めると同時に参加自治体を増やし、最終的には意思決定支援の制度化を求める政策提言を予定しています。

連携協定概要

特別支援学校に通う子どもたちが卒業後の進路や生活スタイル等を主体的に決めることは簡単ではなく、これまでは親や教職員など周囲の大人の主導で選択するケースが多くみられていました。本連携協定は、子どもたちが様々な場面で本人の意思で未来を選択できるようになることを目的としています。

日本財団の役割

  • 実施した施策を効果検証し、全国に展開できるモデル事業とするための評価・分析を実施
  • 高齢者、精神障害者、知的障害者など様々なケースにあわせた意思決定支援の仕組みを全国で展開
  • 支援の制度化に向けた政策提言

横浜国立大学の役割

  • 横浜市の教職員やピアサポーター(自らも障害や疾病等の経験を持ち、その経験を活かしながら支援やサービスを提供する人)、福祉関係者等が子どもの意思決定支援にチームとして関わることができるよう、意思決定支援者の養成講座を実施
    なお、横浜国立大学では、子どもたちが障害などを理由に分離されることなく、個々の特性に配慮された空間の中で等しく共に学ぶインクルーシブ教育を推進しており、日本財団からの助成実績も有します。
  • 本取り組みのマニュアル作成

横浜市教育委員会の役割

  • 横浜市内にある特別支援学校のモデル校選定及び他校への展開検討や意思決定支援の普及

横浜市立特別支援学校(幼稚部・小学部・中学部・高等部)の生徒数

  • 令和5年5月1日現在

幼稚部:27人
小学部:450人
中学部:279人
高等部:727人
計:1,483人

障害者・認知症高齢者等の意志決定支援について

2006年に国連で障害者の権利に関する条約が締結され、日本は2014年に批准しました。しかし、2022年8月に、国連による日本政府に対する初回の審査が行われ、成年後見制度などにおける代理決定への懸念が示されると同時に、支援付き意思決定の仕組みを確立するよう勧告がなされました。周囲の人による決定ではなく、当事者の意思を尊重する、これまでとは別の支援の枠組みを作っていくことが重要です。

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